2020年10月9日 近隣の幼稚園の歯科検診に行きました。
拍動痛、就寝時夜間痛、エアーで痛み、アイスで痛み引いてきたとのことでレントゲン検査の上、急性の歯髄炎と診断し抜髄を行った患者さんがいました。
しかし、1週間後急に痛くなってきたとの事で夜間に来院。打診、圧痛ともに(+)でした。
そこでラバーダムをかけて仮封剤(ベースセメント)を除去してみると壊疽臭がしたそうです。
担当医は私に初診の時になにかこうなるとわかる手がかりはありませんかと尋ねてきました。
私の答えを以下に箇条書きします。
1、天蓋除去したときの歯髄の色はどうだったか?正常な歯髄は桜の花びらのようなきれいなピンク色をしています。歯髄が炎症で腫れていると麻酔をしていても出血します。そして壊疽菌が感染しているとグレーっぽく変色しています。
2、歯髄の臭いはどうだったか?壊疽性歯髄炎は文字通り壊疽臭がします。しかし壊疽菌が感染した初期のときは「かすかに生臭い」臭いがします。担当医は「かすかに生臭い」ってもっと具体的に何の臭いですか?と突っ込んできます。
私は、そうだなぁ、焼く前の目刺しのしっぽの臭いがかすかにする感じかなと、答えました。
彼女は目刺しの尻尾の臭いは嗅いだことありませんというので、では今日当直明けなんだから買いに行って嗅いでみなさいと指示しました。
お互い年齢が離れてくるとある単語の意味を共有するためにはお互いいろいろ試行錯誤してみなければなりません。そしてひょっとすると目刺しの尻尾の臭いをかいだ彼女は別の表現をして私に教えてくれるかもしれません。
彼女が買ってきたのはちょっと高級な(多分デパートで売っている)目刺でした。生に近いものです。
私が言った目刺は安いスーパーで売っているもう少し乾燥が進んだものです。
彼女は自分が買った目刺の尻尾の臭いを嗅いで「このニオイが口の中からしたら
患者さん自身もわからないはずがない。」と感じたそうです。
人に嗅覚や触覚をつたえるのは本当に難しいです。私が伝えたかったのは「もう少し乾燥が進んで日持ちする目刺の尻尾のかすかな生臭さ」であり、そのニオイは天蓋除去した灰色っぽく変色した歯髄からします。
教育はコミュニケーションであり、お互いの認識が一致するまで言葉のキャッチボールを繰り返さなければならないと改めた感じました。